リハビリ型デイサービスにおける「スマホ相談会」レポート
世田谷区内の住宅街に立つ「リハサロン祖師谷」。ここは介護予防のために身体機能の維持・向上をサポートするリハビリ型デイサービス施設です。こちらではさらに口腔ケアや栄養指導、日々のコミュニケーションにまで気を配り、高齢者がより充実した生活を送れるよう様々なサポートに取り組んでいます。
その一環として、スマートフォンに関する相談にも対応。TOKYOスマホサポーター制度を利用してスマホ相談会が開かれています。今回はその様子を取材させていただき、施設長の河野さん、参加されたスマホサポーターにお話を伺いました。
▲明るく開放的な空間に最新のトレーニングマシンが並ぶ施設内部
高齢者の生活にもスマホは欠かせない時代に
「リハサロン祖師谷」施設長:河野礼子さん
―スマホ相談会を開かれたのはどういった経緯からでしょう?
河野さん:この施設は高齢者が住み馴れた場所で暮らし続けられるよう、身体の運動機能を筋トレで維持・向上してもらうために2016年に開設しました。ただこの9年間で世の中のデジタル化が進んで、高齢者が街で生活をしていくためには筋力だけじゃなく、スマホが使えるかどうかも重要になっている気がします。
でも実際には「スマホを持っているのに、使い方がわからなくてほとんど使っていない」という人や、「通話機能しか使っていない」という人がまだまだいらっしゃいます。
ここの利用者は歩いて気軽に外出することがむずかしい方も多いので、相談会イベントに参加することやスマホショップに予約して相談というのはハードルが高いんです。
―それでスマホサポーター制度を利用されたのですね。
河野さん:はじめは施設のスタッフがトレーニングの合間などに相談に応えていたのですが、スタッフには他の業務もありますし。利用者の皆さんも聞きたいんだけど我慢しちゃうというか、遠慮してしまうところがあって。スタッフはもっと教えてあげたい、でもなかなかむずかしい…。
「それじゃ、スマホ相談専門の人に来てもらおう」と。ちょうどSNSでスマホサポーターの募集動画を見て、「あ、これ!これ!」という感じでした。
―タイミング的にもピッタリだったんですね。
河野さん:そうですね。それにデジタルツールが使える若い人たちがここに来てくれたら、ちがう世代と交流する機会にもなるんじゃないかと思いました。いつもと違う人が来ると、皆さんすごく“よそ行きの顔”になって生き生きしてくるんです。
▲通い馴れたトレーニングスペースの一角が相談会場
寄り添う姿勢に心が開かれていく
―実際にスマホサポーターに来てもらっていかがでしたか?
河野さん:利用者の皆さんが、驚くほど喜んでいました。最初は「聞きたいことなんてない」っておっしゃっていましたが、次から次へと聞きたいことが出てきて。最後は「もう帰さない」という感じでした(笑)
やはり相談相手がスタッフの時は皆さん遠慮していたのだと思います。スマホのことを専門に聞いてくれる人が相手だと、こんなにも違うんだと思いました。
使い方の相談だけじゃなく、スマホを使って「自分はこれがしたい」「こんなことが好き」っていう思いを話されていました。近くで聞いていて、この方にはこんな一面もあったんだとあらためて知ることができ、スマホサポーターさんのおかげで私たちにとっても新しい気づきがありました。
▲相手がスマホサポーターなら遠慮なくどんどん相談できる
―スマホサポーターは利用者の方に大好評ですね。
河野さん:「またよろしく、次はいつ?」という感じです(笑)
高齢者の人たちはやっぱりスマホを使うのが怖いんです。どこを触っていいのか、何を開けていいのか分からない。何かを間違えて詐欺被害に遭うんじゃないかとか。それに私やスタッフも個人情報の面などで、どこまで教えていいのか判断がむずかしい部分もあります。
その点、スマホサポーターの方は研修を受けていらっしゃるので安心感があります。
質問に対しての寄り添い方もしっかりされていますよね。私自身もそうですが、家族にスマホのことを聞いて「これは前も説明したよね」なんて言われると次が聞けなくなるんです。でもスマホサポーターの方は何度でも教えてくださる。相談する側からすると、そこはとてもありがたいと思います。とにかく優しく教えてくださるんです。
新型コロナの流行以降、高齢者は外で人と会うことになかなか勇気が持てないようでした。でもこの相談会が社会性のリハビリのようなカタチで、誰かに会うことは怖いことではなく楽しいことなんだという機会になってとてもよかったと思います。
▲しっかり寄り添うことでコミュニケーションも活発に
▲リラックスした雰囲気の中で和やかに進む相談会
スマホ相談会を通じて地域をつなぐ場所に
―普段通っている場所で相談ができるのはとてもいいですね。
河野さん:たとえば「スマホはちょっと…」という人でも、ここに毎回通っていれば他の人が相談している話を聞いて「へぇ〜」と思って、そのうち「私も〜」と自然になっていきます。
あと、この施設では東京都の助成でスタッフ用のスマホやタブレットを購入しているので、その内1台を皆さんにも触っていただけるようにしています。そうすればまだスマホを持っていない人にも試していただけるし、スタッフと同じ機種なら使い方の説明にも便利です。これをきっかけにデジタルツールを身近に感じてもらえたらと思っています。
―スマホ相談会はこれからも開催していきますか?
河野さん:私たちとしてはスマホをひとつのきっかけにして、今までとはちがう新しい生活への取り組みを、お仕着せではなく自分自身で考える機会にしてもらいたいと思っています。
この施設は地域にも開放している場所なので、将来的に毎週決まった曜日にスマホ相談会を定期開催できるようになれば、デイサービスの利用者だけじゃなく、地域の方にも活用していただけるんじゃないかと考えています。
▲スマホを新しいチャレンジのきっかけにして欲しいと語る河野さん
―ここから地域の輪がどんどん広がっていくといいですね。
河野さん:はい、広げていきます!
“便利さ”を越えた“楽しさ”の共有体験
スマホサポーター:林 昇平さん
―スマホサポーターになったきっかけは?
林さん:私は税理士なのですが、相続税関係などで高齢者の方と接する機会が多いです。それで仕事の中でもスマホをうまく使えないという方のお手伝いしたこともあったので、その延長のような感じです。
―今日はどんな相談を受けましたか?
林さん:歩数計や音楽系アプリの使い方のご相談でした。私は普段使わないアプリだったので、「一緒にちょっとやってみましょう」と相談者と一緒になって使い方を探っていきました。
スマホが使えると便利ということもありますが、それ以上に今まで知らなかったツールを楽しんで知っていくことで、より豊かになっていただきたいです。分からなかったことを分かるようになる楽しさを一緒に共有できたら素晴らしいですよね。
スマホ相談をもっと気軽で日常的なものに
スマホサポーター:長島幸太郎さん
―スマホサポーターになってどれくらいですか?
長島さん:2年ほどになります。サポーターで相談会に参加するのは10回目くらいです。これまでは区の施設とか公民館とか、そういった場所での活動が多いですね。
―サポーター活動を通じて何か感じることはありますか?
長島さん:現状ではスマホで困っている人に対して相談の機会がまだまだ足りていない気がします。たとえば街角でもいいですし、もっと気軽に相談できる機会があればスマホで困っている人の助けになると思います。そして、そこでレクチャー受けた人が次は周りの人に教えてあげるような流れになるといいですね。
ここのような施設だと横のつながりもあるので「これ困っているんだよね」とか、「私それ知ってるよ」とか、情報交換もしやすいと思います。そのようなカタチで日常の中でもっと気軽にスマホの使い方が話題に上るようになっていくといいなと思います。
デイサービス施設で開催された今回のスマホ相談会。主催者も相談者も見知った者同士、会場も慣れ親しんだ場所ということもあり、親密で和やかな雰囲気がとても魅力的な相談会でした。
あらためて出かけていく相談会ではなく、いつもの生活の中にある相談会。そこは、困っている人とサポートする人が気軽に触れ合い、楽しさや喜びを分かち合うところ。TOKYOスマホサポーター制度の広がりによって、そんな新しい「場」が地域に生まれはじめているようです。