介護付老人ホームにおける「スマホ講座」レポート
地域の自治会や商店会など様々なコミュニティで利用されている TOKYO スマホサポーター制度。今回レポートするのは参加者が会場に赴くのではなく、普段生活をしている場所にスマホサポーターが赴いて開催するスマホ講座です。
お邪魔したのは新宿区にある介護付有料老人ホーム「チャームスイート西新宿」。こちらの施設では TOKYO スマホサポーター制度を利用した入居者向けにスマホ講座が開催されています。その様子を拝見するとともに、講座を企画された担当の河野さん、そして参加されたスマホサポーターの皆様にお話を伺いました。
▲東京都庁や新宿中央公園にも近い「チャームスイート西新宿」
スマホサポーター制度が講座実現の決め手
「チャームスイート」生活相談員:河野多恵さん
―普段はどのようなお仕事をされていますか?
河野さん:通常の介護の仕事もやっていますが、生活相談員としてホームのご入居者様向けレクリエーションの企画から実施までを担当しています。
―レクリエーションとしてスマホ講座を企画されたのですね。
河野さん:スマホ講座をやってほしいというご入居者様の要望に応えるかたちで企画をしました。でも、いざ依頼先を調べてみるとなかなか良いところが見つからなくて大変でした。
思った以上に費用が必要だったり、時間に制限があったり、参加者がこの人数以上じゃないと頼めないとか、いろんな制約があって困りました。
依頼先探しに半年間くらい悩んでいた頃に TOKYO スマホサポーター制度を見つけてやっとこの講座を実現することができたという感じです。
―スマホサポーター制度はどうやって見つけたんですか?
河野さん:少し前に話題になっていた「東京都公式アプリ」で紹介されていたボランティア活動の中に TOKYO スマホサポーターを見つけました。すごい、これならぴったりかも!と思ってホームページを調べて、過去の活動紹介にデイサービス施設で活動された記事があったので、うちのホームでも呼びたいと思って事務局に連絡をさせていただきました。
▲講座開催に向けて依頼先探しに苦労したと話す河野さん
―そこから講座開催まではスムーズに進みましたか?
河野さん:実際のネットページの使い方とか、募集のかけ方、サポーターさんとのやりとりとか初めはちょっと心配でしたが、一度やってみるとこんな感じでいいんだとわかって、それからは進めやすかったです。
1 回目の時はサポーターの方は本当に来てくれるんだろうか?と不安でしたが、無事に開催することができて、今回で 4 回目の開催になります。
―順調に回数を重ねているんですね。
河野さん:はい。今日来てくださっているサポーターさんの中にはリピーターの方もいらっしゃいますし、ご入居者様の方からもあの人をぜひまた呼んでほしいという声もあったりして、少しずつ顔なじみも増えてきている感じです。今は他に興味ある方いませんか?と発信をして、新たに参加したいという方も増えてきています。
―月 1 回くらい開催されているそうが、これからもそのペースで?
河野さん:そうですね、参加したい人の数によって募集するサポーターさんの人数も変わるかも知れませんが、今くらいの規模であれば月 1 回のペースで続けていけたらいいなと思っています。
多様な人とのふれあいが高齢者を元気に
―スマホサポーターの印象はいかがですか?
河野さん:1 対 1 でついてもらっているので、丁寧に教えてくださっているなっていう印象があります。それにサポーターさんは皆さんいい方ばかりなので。
簡単なスマホ操作なら私たち職員も教えられなくはないのですが、やっぱりそれなりに時間が必要になります。業務の合間ではなかなか思うように時間も取れなくて、スマホ講座を始める前は質問されても待たせちゃったりすることが多かったんですが、今は「じゃあ次の講座で聞いてみましょうか」と答えられるのでとても助かっています。
―毎日生活している場所のせいか、皆さんリラックスしていますね。
河野さん:そうですね、自分の家にサポーターさんに来てもらっているという感じですね。私たちのホームでは自分時間を大切にしていただいているんですが、とくに午後の時間帯は自由時間なのでスマホ講座もこのタイミングで開催しています。
そのおかげで毎回声をかけないと予定時間を超えていつまでも続いてしまいそうです。だから「終了 10 分前ですよー」「もうすぐ時間になりますよー」と私はいつもタイムキーパー役です(笑)
▲入居者が毎日食事を楽しむダイニングルームで開催
▲日常の場で行われるスマホ講座は小規模で和気あいあいとしたムード
―皆さん本当に楽しそうでイキイキされていました。
河野さん:スマホを使えるようにもなることもそうですが、施設外の人と接するいい機会になっています。スマホサポーターの方にはご入居者様と近い世代の方から若い方までいらっしゃるので、いろいろな人と交流できるのは高齢者にとってとてもいいことだと思っています。その意味では 1 対 5 や 1 対 10 のような講義スタイルではなく、1 対 1 の今のスタイルが理想的なのかもしれません。
ここ以外にも系列の施設があるんですが、スマホを使いたいけど使えない、でも教えてもらう人もいないみたいな状況がきっとあると思うので、他の施設にも声をかけてみようと考えています。今後はそうした広がりも作っていって、いろんなサポーターの方に来ていただけたらいいなと思っています。
双方向のやりとりに感じる大きな価値
スマホサポーター:平井得雄さん
―スマホサポーターになったきっかけは?
平井さん:ずっと IT 関係の仕事をしていたんですが、今は仕事を少しずつ減らしてこうしたボランティアの活動をやっています。実は中野区でもスマホ相談を受けるサポーターを 3年ぐらいやっていまして、そことはまた違うやり方もあるのかなと思って、自分の勉強のために 1 年半ほど前から TOKYO スマホサポーターとしても活動しています。
―この施設のスマホ講座には初めての参加ですか?
平井さん:はい。でもどこの会場でも基本は同じですね。ゆっくりお話を聞いて、その方のペースに合わせてのんびりやるというのが私のスタイルです。時には話が脱線することもありますが、それはそれで楽しんでいただければといいと私は思っていて、スマホ操作にこだわらず相手の方に合わせるようにしています。先ほども古い映画のオードリー・ヘップバーンの話になりましたが、私は相手の方と世代も近くて話題も合うので親しくお話ができたと思っています。
―これからサポーターになる人にアドバイスはありますか?
平井さん:単純に人助けというだけじゃなくて、お話すること自体が楽しいですね。それに人生の先輩の方にお話を聞きくことで自分にプラスになることもたくさんあります。自分の知っていることでお手伝いをして、逆に相手からも教えていただく。この双方向のやりとりで得るものは大きいと思います。
スマホのことをあまり知らないからできないと思われる方もいるかもしれませんが、そんなにたくさん知っている必要ないと思います。基本的なことを知っていれば、あとはサポートをしながらその場で調べてお手伝いするという感覚で大丈夫だと思います。
みんなが使えるサポーター制度の素晴らしさ
スマホサポーター:ネルギ・ラハルディさん
―ご出身はどちらですか?
ラハルディさん:インドネシアです。仕事の転勤で日本に来て今年で 5 年目になります。
―東京でスマホサポーターになられたきっかけは?
ラハルディさん:ボランティア活動に興味があって子供や高齢者向けのアクティビティのようなものをイメージしながらいろいろ調べていたんですが、スマホを教える活動というところが面白いなと思ってスマホサポーターを選びました。
―オンライン研修も受講されましたか?
ラハルディさん:はい。少し大変でしたけど、でも役に立ちました。私は日本人ではないので画面操作を表現する「ポン!」とか「スーッ」とかのオノマトペを知らなかったんです。
でもさっき実際に使ったら相手の方に通じて、あっ役に立った、すごい!と思いました(笑)
―サポーター活動は今回が初めてだそうですが、いかがでしたか?
ラハルディさん:とても良かったです。スマホをひとりで安心して使えるようになってもらうことに自分が役に立ててうれしかったです。これからももっとやりたいと思いました。
それに仕事がスマホのソフトウェア開発のエンジニアなので色々な機能を考えたり作ったりしていますが、この機能って本当に要りますか?と考える時に年配の方の使い方を実際に見ることは役に立つと思います。たとえばさっきもスマホ画面のフォントが大きくてびっくりしました。え?こんなサイズ必要?と思ったんですが、年配の方にはやっぱり必要なんだとよく理解できました。もっともっとこうした情報があればソフト開発にも役立つと思います。
―インドネシアにもスマホサポーターのような制度はありますか?
ラハルディさん:インドネシアでは調べたことがないのでちょっとわかりません。でもスマホ操作に困っている年配者はたくさんいます。インドネシアではたぶん公的なサポートが少ないと思うので、東京都のような行政がこういう制度をやっているのはとても素晴らしいなと思います。
介護付老人ホームで開催されたスマホ講座。普段生活をしている空間でのコミュニケーションは終始なごやかで楽しい雰囲気に包まれていました。そこには世代や国籍も越えてサポーターと高齢者がより自然でフラットな立場でお互いを支え合う、そんな理想の関係があるように感じました。
大きなイベントでだけでなく、身近な場所で開かれる小さなイベントにも利用できるTOKYO スマホサポーター制度。必要とする人に柔軟にサポートを届けられるこの制度が果たす役割は、デジタル化と高齢化が進む私たちの社会の中でますます重要なものになっています。